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長崎市青山町の私道封鎖、通行妨害禁止の仮処分

結論としましては、敷地が接する道路については、新築時、中古住宅購入時もしっかりと調べましょう、という内容です。

長崎市青山町の住宅団地内で、私道の一部が封鎖され、バリケードが10月から設けられていました。
長崎地裁の仮処分で、通行妨害の禁止と、バリケードの撤去が仮処分されました。

事の起こりは、この私道部分を昨年11月に福岡県の不動産管理会社が所有することになり、この私道を利用する周辺住民に 不動産管理会社 が通行料として、
月額「一世帯1万円」「自動車所有なし3000円」「自動二輪車のみ所有5000円」の通行料を住民に請求し、「通行料の支払いがされない場合は10月から一般車両の進入を禁止する」連絡があり、「不法に進入された場合、法的措置をとる」との通知書が届いたとのことでした。

この前に、この 不動産管理会社 から長崎市へ道路移譲の打診がありましたが、長崎市は私道部分の整備を行わないうちは道路移譲を受け付けない、との決定をしていたそうです。

ここは古い住宅団地です。
戦後の住宅不足の時期、全国的に民間主導で、 旧宅地造成法による宅地造成が盛んに行われていました。
現在の宅地造成(大規模開発)ではこんなことは起こりませんが、旧宅地造成法の時代は、割と道路に関しての基準が緩やかだったらしく、現行法に照らすと齟齬が生じる場面もよくあります。

まず、道路についての法律は、大きく分けて二種類あります。
道路法と、建築基準法による道路。
道路法による道路は、いわゆる公道であり、国道、県道、市道などがありますね。
建築基準法による道路は、
法第41条の2で、まず、都市計画区域と準都市計画区域に限り適用されます。つまり、都市計画非設定区域では建築基準法による道路はありません。この場合、 法第43条の接道義務は外れてきますね。
ただ、基準法をよーく見てみると、この「道路」と、もう一つ「道」という表現が度々出てきます。
「道」の定義は基準法にはないので、何を示すかは設計にあたりよく確認が必要です。特に住宅以外を設計する場合は重要になってくる場合もあります。ケースバイケースかもしれないので、所管する特定行政庁に確認するのが一番です。

そして、法第42条で1項~6項まで道路の定義があります。

・第1項第一号は道路法による道路。これは言うまでもありません。

・ 第1項第二号は都市計画法、土地区画整理法、旧宅地造成法などの道路。通常の 旧宅地造成法 造成地による道路はこれですが、 長崎市青山町の場合は違うようですね。

・ 第1項第三号は都市計画決定時に既にあった道路。これは通常は認定番号などが振られています。特定行政庁に確認が必要です。

・ 第1項第四号はよくあるものは、予定道路で2年以内に執行予定のもの。実際は予算の関係で執行されない場合も多々ありますが、特定行政庁でこれだよと言われれば道路として扱えます。現地では道路の形もない場合もありますが、普通は分筆までは済んでいますので、現地の杭で線形を確認します。

・ 第1項第五号は、土地を建築物の敷地として利用するため、二号と四号に基準に依らずに築造する政令で定める基準に適合する道で、これを築造しようとするものが特定行政庁からその位置の指定を受けたもの。 ←コレですね。

・ 法第42条第2項は1.8m以上~4m未満の道で、特定行政庁が指定したもので、いわゆる2項道路ですね。

・第3項以下は割愛します。

この 第1項第五号の道路じゃないかなと思います。
築造する政令で定める基準 というのが割とザルで、そもそも砂利道でもOKです。条例などで特定行政庁によって厳しい基準が設けられている場合もありますので、指定を受けられる場合はよく調べてください。
今ではこの位置指定を受ける場合は道路部分は分筆を求められますが、実は昔は求められていませんでした。
たまーに古い 位置指定 道路の案件などで公図をとると、分筆されていない場合もあって、どこが道路なんだ、杭も無いからよくわからんと悩むケースもありますね。
件の 長崎市青山町の部分は写真を見る限りは古いコンクリート舗装でしっかりしているので、恐らく分筆もやっているんじゃないかなと思うところですが。

じゃあ 第1項第五号の道路 であれば、通行の制限などはできないだろうと思うところですが、いやいや、判例がありました。

東京地判 平23・6・29 ウエストロー・ジャパン 、で検索してみてください。

私道であれば、この位置指定道路でも車両の乗り入れについて制限はできる、という内容です。
確かに言われてみれば、この位置指定道路であれば管理者は私人であり、その道路の構造は、法律だけで言えばアスファルト又は砂利敷きでぬかるみのないもの、とだけしか定義されていません。
歩行又は軽車両であればこの構造でも破壊されませんが、車両なら壊れてしまう可能性もあります。それを直すのは私人である管理者です。
国道は元々戦車の通行を可能とする構造で、かなりしっかりとしています。県道、市道の順に仕様(耐荷重)は落ちてきます。
位置指定道路の基準であるアスファルトだけで、薄いものであれば日常的に車両が通行すれば容易に壊れてしまうことでしょう。
それを考慮しての判例だと思います。

今回の問題では金額はちょっと高いのと、今まで無かったのに急に請求するという点で確かにどうかなと思う点はありますが、使用料を取る、というのは全く筋違いでも無いのかなと考えています。
ただ、判例からも歩行者、軽車両のみの住宅へ請求するのはやりすぎかなと。
あと、地目で公衆用道路になっていれば、恐らく固定資産税は免除となっていると思います。この道路部分について毎年役所に税金を納めているから使用料を取る、とされると理由としては違うだろうと思います。
本来は長崎市が移譲を受け、管理するべきとも思いますが、現在の大規模開発の道路は開発道路としても市の基準を満たし、市に移譲され市道として管理されますので、簡単にOKと言えなかったのかなと。

敷地の取得、中古住宅の購入時、重要事項説明でも漏れている可能性もありますので、こういったことも有りうると気を引き締めて調査をしなければならないなと、思いを新たにしました。

位置指定道路であった場合、特定行政庁調査時に、位置指定の指定書の内容と、指定部分の持ち主と周辺住民への聴取はやっておかなければなりませんね。