• 茨城県で新築設計監理申請代願サポート、中古設計監理、既存住宅状況調査、不動産調査、都計法等許可、各種写真撮影等承っております。

検査済証の無い建物の適法性

建物を建てる際、建築確認申請が必要なことは皆さんご存じのことと思います。
最近は銀行などの融資を受ける際、適法な建物でないと資産価値が下落してしまいますので、竣工した際に完了検査を受けられているかと思います。
 最近取り組んでいる業務で、この完了検査済み証が無い建物の適法性を証明する、というものがあります。

1.建築確認、完了検査の位置づけとは

建築基準法(以下法)第6条1項で、「建築主は、・・・・建築物を建築しようとする場合においては、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して・・・確認済証の交付を受けなければならない。」とあります。
この一文で、建築物(あるいは一定の工作物)は工事着手前に確認申請をしなければなりません。

また、完了検査については、法第7条1項で、「建築主は、・・・・工事を完了したときは、・・・建築主事の検査を申請しなければならない。」とあります。
この一文で完了検査を受けなければならないことになります。

ただ、建築物の使用制限については、法では、第7条の6で、「第6条第1項第一号から第三号までの建築物を・・・・建築主は、第7条第5項の検査済み証の交付を受けた後でなければ、・・・建築物を使用してはならない。」
とあります。
第6条第1項第一号 は、特殊建築物200㎡以上のもの。
第6条第1項第二号は、主に木造3階以上や500㎡超などの大規模木造 建築物。
第6条第1項第三号は、木造以外で2階建て又は200㎡超えの建築物。

つまり、法的には 第6条第1項第四号の建物(大部分の2階建て以下木造住宅建物)は、完了検査を受けていなくても、使用制限はかかっていない、ということになります。
恐らく、このことから一昔前は完了検査を受けていない建物が多かったのではないかと推測されます。

完了検査の検査自体は割とあっさりしたものではありますが、その結果完了検査済み証が下りれば、その時点でその建物は適法であるということの証明になります。

主に完了検査済みを受けていないことで問題が起きるのは、増築などの確認申請を行ないたいときです。
基本的に建築確認は1敷地に1建物が基本で、同じ敷地内に有ることが必要な建物(用途上不可分といいます)は別棟で存在できます。
例えばAという敷地に建物1、建物2があって、建物3の敷地内増築の確認申請を行なう場合、建物3について確認済証が下りる場合は建物1と建物2の適法性もある程度担保されます。
もっと言うと、同じ棟に増築する場合は、元々の建物が適法かどうかが審査されます。ここで完了検査されていない建物があったらどうする・・・・?

2.完了検査を受けていない=違法建築、ではない

建築基準法は、時代を経て徐々に編纂されてきています。つまり、法改正によって適法だった建物が適法でなくなってしまう、ということが普通にあります。
理想としては法改正があったら建物も改修して現行法について適法にして、とするのが理想ではありますが、いちいちそんなことは費用がかかるのでやってられません。そこで、建築時に適法であったものは、改正法の適用は受けませんよ、ということになっています。法第3条第2項です。
「既存不適格建築物」という括りにしています。
ただ、これは完了検査を受けてその当時適法だったということの証明がされているもののみです。完了検査を受けていない建物は違います。
それでも、 完了検査を受けていない建物 =即違法建築、ではありません。
もう一つ、法にはこの言葉はありませんが、「手続き違反」というものがあります。
完了検査を受けていない建物は、「単に完了検査受検の手続きをしていないだけで、当時は適法だった」可能性があります。これが手続き違反と呼ばれるもの。
「適法に建てられたんだけど、完了検査を受けていないから手続き違反ではあるが、既存不適格建築物である」ならば、建物は適法で全く問題はないわけです。

3.完了検査に代わるものは?

完了検査を受けていない場合は、このように増築などの確認申請を行なう際に問題が出てきます。また、売却などを行なう際、買主が銀行融資を使おうとすると通常は違反建築物かどうか不明な建物は担保価値が下がりますので融資してくれません=現金決済を行なえる金額まで下げないと売れません。
ではどうすればよいか?
第6条第1項第四号の建物であれば、確認審査機関によっては既存不適格調書(当時違法でなく既存不適格であったことを証明できる内容の図面等)の添付で大体確認を下ろしてくれます。(増築する床面積によっては難しい場合もあります)
第6条第1項第一号~第三号は簡単にはいきません。
ですが、最近はスクラップビルドを抑制し、既存の建物を活用していく機運が高まっていますので、 この完了検査を受けていない建物も活用するルートを閉ざしてしまうわけにもいきません。
一番スムーズにできるのは、法12条第5項に定める報告を、特定行政庁に行う ルートです。
元々は違反っぽいんだけど適法?大丈夫?という報告をさせる制度でしたが、最近はその意味を拡大し、 法12条第5項に定める報告を特定行政庁が受け取ることによって、適法又は既存不適格であることを証明する意味合いが増えています。
この法12条5項、細かい中身が書かれていないため、どういった内容を求めるかは特定行政庁の判断によるところが大きいです。
ですが、全国であまりにも厳しさの振れ幅が大きすぎてもいけない。(確認申請をやられている方はご承知のことと思いますが、特定行政庁ごとに本当にクセが違います)そのため、国土交通省は、 「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関等を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」 を出しました。
一応、このガイドラインによって民間確認機関のお墨付きを得られた書類を法12条5項報告に添付すれば、認められるようにしよう、という趣旨となっています。(まあ、それでもその調査内容は 特定行政庁と話を詰めていかないと難しい部分も多々ありますが)
銀行融資の際も、銀行へ 法12条5項報告の要旨を説明すればほぼ納得してもらえます。

4.当時の法で違法となっているものは?

大きい建物だと、建築当時は適法でも色々といじっていて現状で当時の法からは適法でなくなっている、というケースもあります。
そうなると、当時の法に対して現在の建物を適法になるように是正工事を行なわないと、このガイドラインも使えません。ここに代案はありません。
当時のままに戻すことは不可能でも、追加工事によって当時の法に適法になるようにすればよいのです。
そういった調査、是正工事案作成、工事監理などは、この辺りの制度を把握している設計事務所でないと難しいです。

私も経験豊富、というわけではありませんが、ストック建物の有効活用に興味がありますので、こういった業務を推進しております。
お困りの際は、是非ご相談下さい。