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木造の新耐震基準も二種類あります

日本では、建築基準法によって、建物の耐震性能の最低基準が定められています。
発端となったであろう大地震と対応して歴史を紐解くと、

1891年:濃尾地震

1894年:木造耐震家屋要領制定

1920年:市街地建築物法制定(建築基準法の前身となるもの)

1923年:関東大震災

1924年:市街地建築物法の改正(いわゆる許容応力度計算の方法が規定)

1946年:南海地震

1948年:福井地震

1950年:市街地建築物法廃止、建築基準法制定

1970年:建築基準法改正(必要耐力壁の強化)

1980年:建築基準法改正(新耐震設計法)

1981年(昭和56年6月1日):建築基準法改正(木造の新耐震設計法規定)

1995年:阪神淡路大震災

2000年:建築基準法改正(木造は金物規定、4分割法が規定)

2009年:長期優良住宅の普及の促進に関する法律制定

2011年:東北地方太平洋沖地震(津波被害が甚大)

2016年:熊本地震(2000年以降の建物でも直下率が低い、地盤が悪い地域での被害があった)

大体、この辺りとなっています。
青字が地震、赤字が基準法で大きく変わった時期です。

以前、1924年の市街地建築物法で定められた耐震計算方法を読む機会がありましたが、基本的な考え方(層ごとの重量に、地震力を掛ける)は現在と全く同じとなっていて、コンピュータの無い時代に被災建物を詳細に調べて規定を作った先人の苦労が見て取れるものとなっていました。
1981年、昭和56年6月1日に、いわゆる新耐震基準が有効に始まり、特に木造建物については、壁量や基礎配筋の規定などが定められて、「新耐震以降の建物であれば安全」、という認識が浸透しております。
ただ、この新耐震基準では、金物については具体的な規定はされていませんでした。つまり、壁量だけあって、それが取り付く柱梁は金物が貧弱でも成立していたのです。
1995年の阪神淡路大震災がありました。ここでは、鉄骨造であれば柱と梁が取り付く部分の溶接欠陥が原因で建物が倒壊したり、鉄筋コンクリート造であれば柱梁のせん断補強筋が不足していたためにせん断破壊を起こして、設計通りの耐力を発揮できていなかったり、木造であれば、新耐震基準なのにこの金物が不十分であったために倒壊している被害が報告されています。
この被害調査を受け、2000年の改正で木造については金物の規定、耐力壁のバランスの規定(4分割法)が具体的に規定されました。
つまり、昭和56年の新耐震基準であっても、2000年以前の建物は実は耐震性能が不十分な可能性が大きいのです。

一方、木造建物の耐震診断の基準もあります。基本的には旧耐震基準の建物の耐震性能を確認するためのものですが、この中で柱頭柱脚部金物の仕様による耐力の低減の項目があります。
つまり、金物が不十分であると、昭和56年~2000年の間の建物でも耐震性能を確認すると実は足りていない、ということがあり得るのです。
特に、壁倍率が大きい耐力壁を使用していて金物が不十分な場合、最大で30%の耐力しか見ることができません。
壁倍率1で1.96kNで計算しますが、例えば壁倍率5倍の耐力壁が入っていても金物が釘打程度の場合、1.96x5x30%=2.94kNとなり、
2.94÷1.96=1.5倍、壁倍率1.5倍の現行基準の耐震性能しかないことになります。
木造住宅の耐震性能は、耐震診断基準では「上部構造評点」という言葉で表しますが、「倒壊しない」1.5のギリギリで設計していたとしたら、30%に耐力は低下して0.45となってしまい、「倒壊する恐れが高い」と評価がされることになります。

中古の住宅を購入される際、元々の建築時期についても確認はされるかと思いますが、「新耐震」というだけでは安心せず、2000年以降か否かもひとつの判断基準とされることをオススメします。

特に、中古住宅で住宅ローン控除を利用する場合は、建築日から20年以内、又は耐震基準適合証明の取得、が条件として挙げられます。
現在は2020年なので2000年以前は耐震基準適合証明の取得が必要となるので見逃すことは無いと思いますが、安心して住まうためにもここは注意してください。

新耐震基準でも2種類あること、それは2000年で、そこを境に耐震性能が実は大きく変わってしまう可能性があることを、中古住宅を購入される際は意識されることをオススメします。