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構造の安全性の確認

こんな建物の構造設計もやっています。

大阪府某店舗架構
茨城県某老人保健施設架構
茨城県某住宅架構

建築構造の考え方は基本的なトコロはとてもシンプルです。
建築構造では、一般的なものでは主に構造計算ルート1からルート3があり、その上は時刻歴応答解析、エネルギー法、限界耐力計算、などがあります。
ルート1の下には、木造のみですが、仕様規定による検討(いわゆる4分割法と言われるもの)があります。

最近お問合せの増えているもので木造の構造計算がありますが、主に当事務所ではご希望に応じて、4分割法の検討からルート1まで、お引き受けをしています。
ご依頼されるときに、その結果を何に使うかによって最低限求められる計算の内容が変わりますので、「何の申請に使われますか?」とヒアリングをしていますが、ここでも簡単に解説としてまとめてみたいと思います。

下の図をご覧ください。

クオホーム様のHPより

木構造については、現在このような計算方法によるピラミッド型での検討となっています
下から見ていくと・・・・

仕様規定(壁量計算、他)については、〇のついている部分のみ検討しています。
これは、建築基準法施行令の第三節(第40条~第49条)で規定している内容です。
個別検討なし、とある部分は、建物個別の検討は特にしていない内容です。
実はこの仕様規定、想定している建物の形状は、ほぼ四角形状の総二階までで吹抜が無い建物を想定しています。
一部引っ込んでいたり、コの字型や特にL字型の形状は想定していません。(重心と剛心の位置のズレ、偏心率がL字型は顕著になりやすい)
基礎については、現在はほぼベタ基礎ですが、基礎の断面としてはこんな形状が多いですね。

基礎のGL(地盤面)からの高さは法律の最低基準の300mm~450mmあたりで、上端筋と下端筋はD13、スタラップ(STP)はD10@200mmで書いています。ただ、本当はこのスタラップは基礎の剪断破壊には効果的なので、増やせたら増やしたいトコロ・・・・
あとは、べた基礎の床版は、瑕疵保険の基準で決めることが多いです。
例えば下記のようなもの。(クリックすると基準が見られます)

こんなところで大体決めています。

性能表示計算については、これに水平構面(床などの剛性)と接合部の検討が増えます。梁や基礎については、スパン表という、樹種や梁掛けと梁のスパンで梁の大きさを決める本がありまして、これを参照して決めます。
(個人的にはこのスパン表は、梁掛けなどが完全に一致するケースが少ないので、あまり使いたくありません・・・・また、等級2と3で同じところを見ますので、余裕がありすぎる梁の大きさになる可能性があると思っています。ただ、余裕があるのは良いことではあります。)
性能表示制度や、長期優良住宅、フラット35Sにも使えます。ここまでは手計算でも計算可能です。
私はここで止める計算はあまりやらないので実際のところは分かりませんが、地盤地耐力の検討は大雑把にしか検討できないのではないかな、とも思います。

一番上の許容応力度計算については、いわゆるルート1の構造計算で、最も詳細に検討します。
屋根の仕上げに応じた重量、外壁の重量、内部の用途、仕上げによる重量、これを母屋→小屋束→小屋梁→柱→柱を受ける梁→梁を受ける柱→柱を受ける土台と基礎梁→床版で負担して床版が持つか→地盤が持つか、までを詳細に検討します。
ちなみに、この計算を行なうとプレカット業者様の出された梁断面だと最低数か所は足りなくなります。2階床は最近は24mm合板以上の剛床が多いので吹抜が無い場合は大丈夫ですが、吹抜があると耐力壁の位置や特殊な金物などを追加しないと成立しないことも多いです。また、屋根階はほぼ水平剛性が足りなくて火打梁や金物の追加、特殊な垂木止めビスを使わないと成立しないことも多い印象です。

この構造計算ルート1、考え方はシンプルです。
建物にかかる地震力は、下記の式で表されます。

  1. ①地上部分の地震力=W(固定荷重+積載荷重)×地震層せん断力係数Ci
  2. ②地震層せん断力係数 Ci=Z・Rt・Ai・Co (これに耐震等級2はx1.25、耐震等級3はx1.5)
    • E:地震地域係数
    • Rt:振動特性係数
    • Ai:高さ方向の地震層せん断力係数の分布係数
    • Co:標準せん断力係数

また、風圧力は、下記の式で表されます。

  1. ①風圧力=速度圧q×風力係数(これに耐風等級2はx1.25)
  2. ②速度圧q=0.6EV2o(N/㎡)
  • E:建築物の屋根の高さ及び周辺の地域に存する建築物、工作物、樹木等の風速に影響を与えるものの情況に応じて大臣が定める方法により算出した数値
  • Vo:その地方における過去の台風の記録に基づく風害の程度等の風の性状に応じて30m/秒から46m/秒までの範囲内で大臣が定める風速(m/秒)

お?いきなり計算式が出てきて難しくなったぞ?と思うかもしれませんが、要は重ければWが増えて地震力が増えますし、建物が大きかったり風が強い場所であれば風圧力が増えるだけです。
基本的に在来木造の構造は柱梁がピン構造(柱梁のたわみによる曲げモーメント力が伝わらない)なので、力の伝達はシンプルです。この力に対して、各部材の長期許容応力度(地震や風が無い状態での安全性)と短期許容応力度(大地震や強い風での安全性)を検討して、全ての部材が安全であることを確認します。(シンプルとはいえパソコンは必須です)
耐力壁の入れ方や考え方はそれぞれの構造設計者によって違いますし、金物の入れ方も違うでしょうし、それによって基礎にかかってくる力や配筋や型枠の施工性をどこまで考慮するかはそれぞれ違いが出てくることでしょう。

色々と計算をやってみると、下記のような適用範囲かなと思うところです。

仕様規定:平屋又は120㎡程度までの吹き抜けやスキップフロアのない総二階建。
性能表示計算:平屋又は吹き抜けやスキップフロアのない総二階建で性能表示が必要なもの。
許容応力度計算:制限なし。

あなたが建てようとしている建物、どこまでのレベルで安全性の検討をしていて、その検討方法のメリットデメリット、使いたい補助金や申請について的確か、きちんと理解して選択をしているでしょうか。

当事務所では起点である使いたい補助金や申請、建物形状から、最適なものを提案することができます。確認申請は他事務所で、構造部分だけ仕様規定の検討や構造計算のみのご相談なども承っております。大スパンの特殊な用途の構造も提案できますので、木造の構造設計屋をお探しであればご相談下さい。開発許可や農地転用、確認申請やフラット35、性能表示の申請等までも承れます。