4月以降の4号特例への対応への講習会を受講してきました。
それを受けて色々と資料を漁っていると、壁量計算でやる場合の仕様表で、気になる記述がありました。「基礎鉄筋の縦筋はフック付きとする」という記述です。
いつも構造計算するときは、現場での施工性を考慮してフックなしで計算していますが、4月以降に壁量計算で行く場合はフック付きにしないといけなくなるのでしょうか。
4月以降版の法令集が無いので、とりあえず現行法で当たってみます。
まずは建築基準法。
壁量計算は仕様規定なので、法第42条の土台及び基礎の部分。
準用としてS62告示1897号もありますが、ここには記述無し。
基礎はRCなので、法第73条。鉄筋の末端はかぎ状に折り曲げるとありますが、但し書きで基礎ばばりについては異形鉄筋を使えば折り曲げなくてよい記述があります。
木造建物の基礎について、H12告示1347号もあります。
縦筋に影響してきそうな部分は、第1の第1項第二号で、まずは基礎ばりを設けなければならない、とあるので、基礎立上りは法規上は基礎ばりと分類されることがわかります。
第3項第五号ロで、立ち上がり部分の補強筋はφ9mm@300以下で配置、とありますので、フックについては書かれていません。
以上のことから、とりあえず建築基準法では記載なし。
次にグレー本。
P.151から基礎について書いてあります。
絵的にはフックがありますが、「フックを付けなければならない」とは書いてありません。
P.165の基礎ばりの許容せん断耐力の計算式で、※1としてフックなしの場合はせん断補強耐力が少し弱くなります。
0.5sfwt(pw-0.002)を短期でD10@200として算定してみると、0.5x295x(71.33/(150×200))=0.3507となります。
ここを除いた部分では、コンクリート強度を18Nとすると、
sαxsfs=1×1.2=1.2となります。
およそ3.5:1の比率でフックが効いていることになります。
木造3階建てならそれなりに効果はありそうですが、2階建てで耐火でもない場合、基礎立上り厚さ150mmとするならば不要では?と思うぐらいです。
120mmなら微妙かなぁという印象。
色々と計算していると、2階建てぐらいなら算定上曲げ破壊しか経験がないので、剪断破壊はしなさそうです。スパンが飛んでいたり3階建てになると、柱のめり込み補強が必要なケースもあるので、そういう場合は剪断破壊はある程度考えないといけないかもしれません。
剪断破壊は斜めに亀裂が走るので、剪断耐力のみに効く、という式なんですね。
そもそも、フックを付けると120mmではかぶりがとれないと思います。150mmでもどうかな?
かぶり厚でリスクを負うぐらいなら、フックはつけないほうが良いとも考えられます。
次に黄色本(2020版 建築物の構造関係技術基準解説書)を見てみます。
木造については主にP.99からです。
布基礎については絵的にフックはありますが、べた基礎はちょっとよく見えない。無さそうにも読めます。
解説の文章上でも特に書いてありません。
また、P.177の鉄筋の定着に関する部分で、
「丸鋼は全てフックが必要である」
「異形鉄筋では・・・一般にフックを必要としないが、・・・はりの出隅部分や・・・・フックを義務付けている」
とありますが、基礎ばりの剪断補強筋にフックが必要とは読めません。
以上のことから、改訂される建築基準法の法第73条に関する部分が変わらない限り、
木造建築物の壁量計算で成立する建物は、
縦筋はフックは要らないだろう。
と判断しています。
まあ、あとは審査で指摘されたら、工学的な根拠を示してもらい、協議、というところでしょうか。